思春期外来
思春期は、心身ともに大きく成長し、大人へと変化していく大切な時期です。この時期には、ホルモンバランスの変化に伴い、女性の場合、月経に関する様々な症状が現れることがあります。思春期外来では、このような月経に関するお悩みや、その他、思春期に特有の心身の不調について、専門の医師がサポートいたします。一人で抱え込まず、どんなことでもお気軽にご相談ください。
月経痛、月経不順、月経前症候群の症状について
思春期には、以下のような月経に関する症状がよく見られます。
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月経痛(生理痛)
月経中に下腹部が痛くなったり、腰が重く感じたりする症状です。個人差はありますが、多くの方が経験します。主な症状としては、お腹の痛み、腰の痛み、吐き気、頭痛、だるさなどがあります。学業や日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合は、「月経困難症」と呼ばれます。
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月経不順(生理不順)
月経の周期が乱れることを月経不順と言います。月経が来る間隔が長すぎたり、短すぎたり、あるいは不規則になったり、出血の量や期間が一定でなかったりする状態です。思春期の初期は、ホルモンバランスがまだ不安定なため、月経不順が起きやすい時期でもあります。
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月経前症候群(PMS)
月経が始まる1週間から数日前くらいから、心や体に様々な不調が現れ、月経が始まると症状が軽くなったりなくなったりするものです。イライラする、気分が落ち込む、集中できない、お腹が張る、胸が張る、頭痛がするなど、症状は多岐にわたります。日常生活に支障をきたすほど症状が重い場合は、「月経前症候群(PMS)」と診断されることがあります。
月経痛、月経不順、月経前症候群の原因について
これらの症状には、様々な原因が考えられます。
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月経痛の原因
月経痛の主な原因は、「プロスタグランジン」という物質です。このプロスタグランジンは、子宮を収縮させて経血(月経の血)を体の外に出す働きをしますが、量が多すぎると、子宮が強く収縮しすぎてしまい、痛みを引き起こします。また、冷えやストレス、骨盤内の血行不良なども痛みを悪化させることがあります。思春期では、子宮の出口がまだ十分に開いていないために、経血がスムーズに出にくく、痛みが強く感じられる場合もあります。
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月経不順の原因
思春期の月経不順の主な原因は、ホルモンバランスの未熟さです。月経は、脳から分泌されるホルモンと卵巣から分泌されるホルモンが連携し合うことでコントロールされています。思春期は、このホルモンの分泌がまだ不安定なため、周期が乱れやすくなります。また、ストレス、急激な体重の変化(無理なダイエットなど)、睡眠不足、過度な運動などもホルモンバランスに影響を与え、月経不順の原因となることがあります。
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月経前症候群(PMS)の原因
PMSの原因はまだはっきりと解明されていませんが、月経周期に伴う女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の急激な変動が関係していると考えられています。このホルモンの変化が、脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)に影響を与え、心や体の不調を引き起こすと考えられています。ストレスや食生活、生活習慣なども症状を悪化させる要因となります。
月経痛、月経不順、月経前症候群の治療法
症状や原因に合わせて、様々な治療法があります。
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月経痛の治療法
対症療法
痛みを和らげるための治療です。市販の鎮痛薬(痛み止め)を飲む、体を温める、リラックスするなどがあります。痛みが強い場合は、医師が処方する鎮痛薬を使用することもあります。
ホルモン療法
低用量ピルなど、ホルモン剤を使ってホルモンバランスを整え、プロスタグランジンの分泌を抑えることで痛みを軽減します。子宮内膜の増殖を抑える効果もあり、月経量を減らすことで痛みを和らげる効果も期待できます。
漢方薬
個人の体質や症状に合わせて、漢方薬を処方することもあります。血行を改善したり、冷えを改善したりする効果が期待できます。
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月経不順の治療法
生活習慣の改善
規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスの軽減などが基本となります。無理なダイエットは避け、健康的な体重を維持することが大切です。
ホルモン療法
ホルモン剤を使って月経周期を整えます。低用量ピルや、黄体ホルモン製剤などを用います。これにより、月経が定期的に来るようになり、体調の安定にもつながります。
漢方薬
体質改善を目指し、ホルモンバランスを整える効果が期待できる漢方薬が用いることもあります。
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月経前症候群(PMS)の治療法
生活習慣の改善
ストレスマネジメント(ストレスを上手に解消する方法を見つけること)、規則正しい生活、バランスの取れた食事、カフェインやアルコールの摂取を控えることなどが大切です。
薬物療法
症状が重い場合は、以下のような薬が使われます。
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対症療法薬: 頭痛には鎮痛薬など、症状に応じた薬を使用します。
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低用量ピル: 排卵を抑え、ホルモン変動を小さくすることでPMSの症状を軽減します。
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SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬): 特に精神症状が強い月経前不快気分障害(PMDD)の場合に用いられることがあります。脳内のセロトニンの働きを調整し、気分の落ち込みやイライラを改善する効果を期待するものですが、当院では使用しておりません。
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漢方薬: PMSの症状にも効果が期待できる漢方薬を処方することがあります。
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思春期に経験する月経の悩みは、決して珍しいことではありません。しかし、その症状が日常生活に影響を与えたり、つらいと感じたりする場合は、我慢せずに専門の医療機関を受診することが大切です。当院の思春期外来では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた丁寧な診察と、分かりやすい説明を心がけています。安心してご相談ください。