快眠のために…不眠と中医学を添えて
年々暑くなって、冷房をつけて寝ると寒かったり、冷房を消すと暑くて寝苦しかったりと、温度調節が難しいですよね。
眠りがやってくるのは、脳や臓器などの深部体温が下がる時です。深部体温は皮膚の表面から熱が放散されることによって低下していきます。気温や湿度が高いと、その放散が妨げられてしまって、深部体温が下がりにくくなり、寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めてしまったりして寝苦しいと感じます。
2021年の経済協力開発機構(OECD)の調査では先進国33ヵ国の中で日本人の睡眠時間は最も短いと言われており、健康面でも睡眠不足や睡眠の質が悪い状態が続くと、高血圧、糖尿病、がん、うつなどの病気のリスクが高くなることが知られています。
また美容面でも睡眠が悪いと…肌の老化が進む傾向になることが報告されており、「睡眠が悪い」ということは早急に改善したい問題ですよね。
「寝つきが悪い」や「途中で目が覚める」などの睡眠の不調や「睡眠をとっても休まった感じがしない」状態が長く続く場合、背後に睡眠障害が潜んでいることがあります。不眠症はストレスを契機に発症することも多いです、また睡眠の不足とともに睡眠をとった時休まった感じがしない状態をもたらことが報告されています。閉塞性睡眠時無呼吸や周期性四肢運動障害は、日中の眠気・居眠りや睡眠休養感の低下以外の自覚症状に乏しいこともあります。これらの疾患はいずれも50歳代以降有病率が増加するため、注意が必要です。
更年期と不眠
労働世代の後半には更年期を迎えるため、さまざまな不調が生じやすくなります。更年期女性の4割〜6割が睡眠の悩みを抱えており、仕事にも影響することが報告されています。また更年期では不眠症や閉塞性睡眠時無呼吸などへの罹患リスクが増大することが知られており、女性ホルモンの減少が関連すると考えられていますが、明確な機序は十分に解明されていません。
良質な睡眠のための環境
- 日中にできるだけ日光を浴びると、体内時計が調節されて入眠しやすくなる。
- 寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながる。
- 寝室は暑すぎず寒すぎない温度(夏の適温は25〜28度程度、湿度50〜60%程度)で、就寝1~2時間前に入浴し身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなる。
- できるだけ静かな環境で、リラックスできる寝衣・寝具で眠ることが良い睡眠につながる。
睡眠の質改善のために意識したい運動習慣
- 妊娠中の女性では、医師に相談しながら身体に負担の少ない低~中強度のウォーキングやマタニティスイミング、ヨガなどを1日20~60分程度、週に1~3回を目安に行う。
- 更年期の女性では、ヨガなどの運動。
- 不眠症の人は有酸素運動やヨガ・ピラティスなどの運動、閉塞性睡眠時無呼吸がある人は有酸素運動や筋トレが有効といわれています。これらを含む中強度以上の運動を主治医と相談しながら習慣的に行うと、睡眠時間の増加や主観的な睡眠の質の改善につながると考えられます。
参考文献・引用 「健康づくりのための睡眠ガイド」
不眠と中医学
中医学では「寝つきが悪い」状態と「寝つきが良いが、何度も目覚める」状態はまた異なる弁証となります。また途中で目覚める時間によっても関係する「五臓六腑」が異なると考えられています。心配や怒り、ストレスなどが影響し「心」や「肝」などのバランスが悪くなった状態のことが多いですが、「不眠」というひとつの状態でも処方する漢方薬はその人それぞれで異なってきます。
当院では睡眠時無呼吸症候群などの器質的な不眠の検査や持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)も可能です。明確な原因が見つからなかった場合や不眠の状態が続いてお困りの際は個々の体質や症状に合わせて多種の漢方薬を取り揃えておりますので、いつでもご相談ください。